展覧会企画

春画
SHUNGA 老若男女 貴賤を問わず

日本では古くから「春画」と呼ばれる絵画、人間の性を大胆露骨に描いた絵や版画が数多く描かれてゐたことは、今や世界的に知られてゐます。ところが今では日本人でありながら、春画の原物を見たことがないといふ人が多いのではないでせうか。それは明治以降の西欧に倣つた日本の近代化の中で、「春画」のやうな絵は西洋の規範では「猥褻」なものと看做され、所蔵してゐることも見ることも恥づべきこととしてタブー視されてきたからです。

ところが最近のヨーロッパの研究によると、19世紀後半から20世紀にかけてパリを中心にして欧米に巻き起こつた「ジャポニスム」の大波の内で、名だたる藝術家たちに浮世絵の中でも「浮世絵春画」がたいへん強い衝撃を与へたことが明らかになつてきました。その時期の優秀なコレクションが広く公開されるやうになつたのは1980年代のパリやベルギーでしたが、その後今世紀に入つてフィンランドのヘルシンキ市立美術館、スペインのバルセロナ・ピカソ美術館、イタリアのミラノ、フランスのパリで次々と春画が展覽され、2013年にはロンドンの大英博物館で大春画展が開催され、イギリスのみならず欧米で大好評を得ました。

その展覧会がやうやく春画の本国である日本で開催されたのは、二年後の東京・永青文庫と三年後の京都・細見美術館においてでした。これまた両展覧会とも大好評を得ました。おそらく欧米のみならず日本においても、性に対する考へ方が大きく変はつてきてをり、「春画」に対するタブー視(古い日本のポルノグラフィーといふ見方)が解かれてきてゐるやうに思はれます。この機に日本全国において「春画」の原物を御覧いただき、その実像を通して「日本の春画」について広く理解を得ると共に、おそらく全国各地に秘蔵されてゐるであらう「日本の春画」が日の目を見る切掛けになればと幸ひです。