近代日本洋画の名作展
ひろしま美術館コレクション
広島銀行が、創業100周年を機に、「愛とやすらぎ(pro caritate et pace)」をテーマに設立したのが公益財団法人ひろしま美術館です。一枚の絵が人々の心を癒すと信じ、戦争で傷ついた人々のやすらぎの場になればとの思いから、あえて「ひろしま」美術館と名付け、中心部にほど近い広島市の中央公園の一角に建てられました。「世界の名画を皆さんに」をモットーに集められた、印象派を中心としたフランス近代美術のコレクションは、ドラクロワからはじまり、マネ、モネ、ルノワール、ゴッホ、セザンヌ、そしてマティス、ピカソ、ユトリロ、シャガールと、近代美術を概観できるものとして、世界的にもよく知られています。
一方で、これらフランス近代美術に影響を与えた、あるいはお互いに影響を与え合った、日本の洋画や日本画を収集していることは意外と知られていません。印象派が西洋世界に根付いた時代は、日本では、まさに西洋に大きく目を開いた時代でした。日本の伝統の枠内には収まりきれない西洋絵画の世界を目の当たりにしたのです。また一方で、西洋世界も、その伝統からの脱却を試みて、同じ趣向を日本の伝統の中に見て、自らの芸術の展開に大いに参考にしました。今日ジャポニスムと呼ばれるこの動きは、西洋の伝統と日本の伝統が、近代という時代に、まさに出会ったところにはじまります。
このように、西洋絵画を知る上でも、また日本の伝統の本質を知る上でも、明治以降の日本近代美術の展開を知ることは重要なことです。西洋美術を主体的に集めた美術館が収集した作品の中から、黒田清輝や浅井忠からはじまり、安井曾太郎、梅原龍三郎などへと連なる洋画作品約70点を紹介します。西洋と出会ってできた近代という時代を知る最適な展覧会であるとともに、明治から大正を経て明治に至る日本近代を概観的に網羅する展覧会でもあります。