展覧会企画
日本の色 染司よしおか 吉岡更紗の仕事
「染司よしおか」は、京都の地で江戸時代から200年以上続く染屋で、当代の吉岡更紗で六代を数えます。一時は時代の波により、化学染料で染色を行っていた時期もありましたが、四代目の吉岡常雄が植物染料を研究し、五代目を継いだ吉岡幸雄が、化学染料を一切使わない、植物だけの染色を行うようになりました。
こうして、日本において古くから伝わってきた植物染め、自然に存在する草木花の中から美しい色彩を引き出して絹や麻、木綿、和紙などの自然素材を染めることを生業としています。
夏になると美しく咲く紅花を摘み取り、晩秋に入ると収穫された稲藁を竈で燃やし、灰汁をつくり、1月からは2月20日頃にお納めする奈良東大寺修二会(お水取り)で飾られる椿の造花用の和紙を紅花で染める、というように1年を振り返ると、工房の仕事は歳時記のようであり、自ずと季節の細やかな変化や移ろいに敏感になります。
薬師寺、石清水八幡宮など古社寺の伝統的な行事にも関わり、日本古来の染色技法を探求することにも重きをおいております。また平安時代の『源氏物語』54帖に描かれた衣装やその彩りを、古法に倣い植物染料で再現いたしました。かさね色目と呼ばれる美しい色彩の重なりも表現しています。
本展では、春夏秋冬、移りかわる季節を表した作品、古社寺にお納めしております和紙の造花や伎楽衣装、そして現代の生活に加えられる美しい色彩を一堂にご覧いただきます。めでたき一年のはじまりから、暦の折々に色を添える日本の色、四季の彩をどうぞごゆっくりお楽しみください。