展覧会企画
荻須高徳 リトグラフ展 ―稲沢市荻須記念美術館コレクション―
パリの街並みを描く画家として知られる荻須高徳(1901-1986)はリトグラフを晩年となる1967年から始めました。荻須が愛したパリやパリ郊外、ヴェネツィアの風景作品からは、油彩画と同様、人々の暮らしや建物の歴史を感じ取ることができます。
油彩画の様に厚く塗り重ねることができないリトグラフは、版の作成にあたって主題を少ない色数に置き換える必要があります。簡潔でありながら、表現の力強さ、色調の豊かさは荻須のリトグラフの最大の魅力であり、芸術著述家であったベルナール・ド・モンゴルフィエ(1926-2021)* はその作品を「弦楽四重奏」に例えて評しています。「最小限の色数で最大限の効果」を求めたと荻須が語るように、作品では黒や白、色彩の持つ力が巧みに引き立てられ、透明インクの色の重なり(ハーモニー)は明快に、そして爽やかにその土地の風光や街並みの魅力を伝えます。
本展では稲沢市荻須記念美術館建設当時に、荻須自らが美術館に寄付をしたリトグラフ作品を中心に、油彩を織り交ぜて、荻須のリトグラフの画業をご紹介します。